# 第1章 バーチャルリアリティとは ## 1.1 バーチャルリアリティとは何か ### 1.1.1 バーチャルの意味 - 「Existing in essence or effect though not in actual fact or form」(米国継承英語辞典 第三版)
Supposed | Virtual <--> Nominal | Real <--> imaginary### 1.1.2 バーチャルリアリティとその三要素 - VRの三要素 - 3次元の空間性:人間にとって自然な3 次元空間を構成している。 - 実時間の相互作用性:人間がそのなかで、環境との実時間の相互作用をしながら自由に行動できる。 - 自己投射性:その環境と使用している人間とがシームレスになっていて環境に入り込んだ状態が作られている。 - 目を開けるとちゃんとそこに自分の手がある。 ### 1.1.3 バーチャルリアリティと人間の認知機構 - a priori 先験的、先天的 - a posteriori 後天的、経験的、帰納的 - バーチャルリアリティでは人間の周りに別の空間ができあがると考え、テレイグジスタンスは、自分の方が別の空間に移動したと考える。 ### 1.1.4 バーチャルリアリティの概念と日本語訳 - 基本はバーチャルのまま。どうしても訳したいなら「人工現実感」。 ### 1.1.5 道具としてのバーチャルリアリティ - human tools for 3Cs and 3Es - Creation、Control、Communication - Elucidation、Education、Entertainment ## 1.2 VR の要素と構成 ### 1.2.1 VRの基本構成要素 - 出カシステム デイスプレイ - これはわれわれの感覚入力を模擬するための仕組み。 - 別の言い方をすればシステムからユーザヘ情報を流すための装置。 - VRの分野においては、すべての感覚レンジにわたってディスプレイと言う。 - 入力システム - 運動系を介してユーザからシステムヘ伝わる情報の流れを司る。 - データグローブのようなジェスチャー入カシステムを始祖とし、位置計測、身体計測などの技術と関連する方式が多用されている。 - シミュレーションシステム - 表面的に感じられる世界の裏側に深層的現実感が存在し、それを生成するための要素。極端に言えば、リアルタイムシミュレーションの仕組みが必要。 - 三つの構成要素が円滑に組み合わさり、感覚と操作のループがうまく構成されたとき、われわれは現実感を感じる。 ### 1.2.2 VR世界のいろいろ - 世界をより充実させようとする場合、その中に存在するさまざまな物体相互間の拘束関係や相互作用は、最初からスクラッチビルドしなければならない。 - ユーザがあたかもその遠方世界にテレポートしたかのような状況をテレイグジスタンスあるいはテレプレゼンスと呼ぶ。 ### 1.2.3 VRをどうとらえるか - AIP - A:Autonomy (自律性) - I:Interaction (対話性) - P:はPresence (臨場感) - VR世界とユーザとの関係は包含的な関係。 - VRにおける体験とはほとんどのヒューマンインタフェースと異なり第一人称体験。 - VRの場合、本質的なのは、あくまで身体運動との相似性が極めて高く、通常のインタフェースにつきものの記号的恣意性が、ほとんど存在しない。 ## 1.3 VR の歴史 - バーチャルリアリティという言葉が使われるようになったのは、1989年に米国のVPL社がEyePhone、DataGlove、DataSuitの宣伝文句が始まりと言われている。 - 約1万8000年前 - 南フランスのラスコー洞窟で発見された壁画。人々を現実世界から 離れた一種のバーチャル世界へ導く役割。 - 18世紀から19世紀にかけてヨーロッパで生まれた全天周絵画のパノラマ - イギリスの画家Robert Barkerによって始められた手法 - パノラマの発展形としてロール式の絵を巻き取りながら動かすことで、絵画を用いながら動画を表現するムービングパノラマ - マルセイユから横浜までの航路の風景を描いたMareoramaの作品 - ピッチングやローリングの動きを伴う客船型の観覧台が設けられ、送風機による潮の香りや照明による太陽の動きや時間の変化を提示する手法 - 1963 - 街中をバイクに乗って走り回る一種の体感型ゲーム「SENSORAMA」(M. Heilig) - 利用者が椅子に座ると目の前のディスプレイに立体ビデオ映像が映し出され、バイクで街中を移動するという状況の変化に応じて音響や椅子の振動、あるいはファンによる顔への風の提示、風景に合わせた臭いの提示などの仕組みが組み込まれていた。 - 1967 - CG映像に触ると言うコンセプトのGROPEプロジェクト - ノースカロライナ大学のF. Brooksら - このプロジェクトではマスターアームを力覚フィードバックの装置として用い、分子結合シミュレーションの結果として得られる分子間反力を力覚によって表現。 - 1968 - 最初のHMD - I. SutherlandがUltimate Displayという概念を提唱 - 小型のCRT に提示された映像をハーフミラーを介して見る光学式シースルーのシステムであったが、頭部には利用者の頭の回転を計測するための機械式のリンク機構が取り付けられていたのが特徴。 - 線画によって描かれた単純なCG映像 - 1969 - 鑑賞者の姿をビデオカメラで撮影し、作品の映像に合成あるいは反映させることで、鑑賞者が作品の中の物体を動かしたり、映像が鑑賞者に反応して動く「インタラクティブアート」。 - M. Kruegerが発表したMETAPLAY - M. Kruegerは1983年にArtificial Reality (人工現実感)を出版 - 1981 - 部屋全体をコンピュータの端末として利用し、利用者は椅子に座りながら壁面スクリーンに表示されだ情報を音声、ジェスチャー、ジョイスティックなどのインタフェースを使用して操作する方法を実現した。 - 「Media Room」(MIT Media Lab. - N. Negroponteら) - 1982 - ヘルメット型のHMD を用いた戦闘機用のスーパーコックピット「VCASS」 - 米国空軍のライトパターソン基地でT. Furnessら - ディスプレイコックピット内の電子機器の表示を行った。 - 1982 - スレーブロボットの視覚情報や力覚情報をマスター側の操作者に立体視映像や力覚フィードバックを用いて提示する「TELESAR」(機械技術研究所の舘障)によりテレイグジスタンスを実現した。 - 1983 - エグゾスケルトン型のインタフェースデバイスを装着し、立体視映像や力覚フィードバックを伴った直接操作を行うインタフェースを構築したテレプレゼンスロボット「Greenman」(米国海軍海洋システムセンター J. D.Hightower) - 1985 - 宇宙船内のコックピットの設計としてVirtual Environmentの概念の提案 - NASAのM. McGreevy、S. Fisherら - HMD、データグローブ、3次元音響などのデバイスや技術を用い、コックピット内の利用者の周りの3次元空間に。